『このひより』運営チームの佐々木です。
この事例紹介では、サービスを利用いただいた方々の反応や、実際に仕上がった本の内容、僕たちがインタビューをさせてもらうなかで感じたことなどをお届けしていきます。
あくまで一つのギフトの形としてお読みいただきながら、「自分だったら、こんな場面で贈りたいな」とイメージを膨らませていただければうれしいなと思っています。
独立へのエールに『このひより』を
今回ご紹介するのは、β版リリース前に行ったテストユーザーの方の事例。贈り手は佐々木で、僕の前職時代の後輩(Yさん)にインタビューをさせてもらった話になります。
僕は彼女とは3年ほど前まで一緒に仕事をしていたのですが、出版社を退職してフリーで「編集者」×「ブライダルスタイリスト」になると知り、「同じ独立組の仲間として応援したい」「その選択をした背景を聞いてみたい」と思っていました。
そこに今回、ちょうどこのサービスの開発が重なったので、このひよりを独立のプレゼントにさせてもらえないか相談したわけです。
自分自身を振り返っても、フリーで活動を始めてからは「独立した時の気持ちに立ち返ろう」と思うことが何度もあったので、それが本として形に残ることには大きな意味があるんじゃないかな、と感じていました。
「元同僚」としてわかりあえる話。まったく知らない話。
このインタビューはβ版ができるよりずっと前に行われましたが、「語り手に話をしてもらうときに、贈り手が同席することの価値」をはっきり感じた、最初の機会になりました。
『このひより』のインタビューでは、基本的に贈り手も会話に参加しながら、「この日」を一緒に過ごしていただきます。今回であれば、Yさんと僕には一緒の職場にいたという背景がありました。
そのため、共に仕事の魅力や業界的な課題をよくわかっていました。お互いのキャリアについても当時から話していたので、今も共感できる視点や話題がいくつもあった。そのことが、語り手さんから話を引き出していくうえですごく重要だと、Yさんと「この日」を過ごして実感しました。
また、当たり前のようですが、「知り合いであっても、知らないことはたくさんある」という点も大きな気づきでした。
Yさんとは案件で組むことが何度もありましたが、部署は別でした。なので、例えば「なぜ編集者になったんですか?」の質問ひとつにも、初めて聞く生い立ちの話や想いがあったり。
あるいは、仕事をしていて一番テンションが上がったという、書店での体験を話してくれたり。
向き合って話すことで、編集者としてのYさんの力を改めて知ることができたのも、すごく良かったなと思います。
独立への記念に……と思っていましたが、実は語り手の原点やこれから大事にしたいことを聞くことで、「むしろ贈った側に気づきがある」「知れてうれしくなれる」ことを、このとき強く感じました。
何年後かに、また読み直したい本
実はインタビューのあと、執筆・編集の方向性が定まるには時間がかかりました。
ごく限られた人にだけ届ける原稿づくりは、普段のインタビュー記事とは別の難しさがあります。さらにサービスとしての形、届けるプロダクトの形も試行錯誤していた最中だったので、原稿ができあがっても、そこから「本」として贈るまでに相応の時間を要してしまいました。
経過報告を入れながらではありましたが、待ち続けてくれたYさんには、本当に感謝しています。(※現在はサービスの形ができあがり、インタビュー後の原稿確認までに4〜6週間、確認後、本をお届けするまで4〜6週間というスケジュールで運営させていただいています)
何ヶ月も経ってから、ようやく贈ることができた本。手渡しはできませんでしたが、包装してお送りして、後日Zoomでヒアリングさせてもらい、以下のようなうれしいコメントをいただきました。
・「自分の名前で本に残る」特別感が想像以上。編集者として本をつくっていても、自分がオモテに出ることはまずないので、すごくうれしい。
・実際にフリーで仕事を始めて、当時思い描いていた部分とは離れていることもあるけど、それでも勇気づけられた。今の状況に対して、「これで間違ってない」と思えた。
・何年かしたら、また考えや気持ちが変わると思う。そのときに読み返したい。
現在の彼女は、昨年僕に語ってくれたように、本の編集とブライダルの仕事を2つ平行させている真っ只中。最終的には「両者の掛け算をできれば」という気持ちを持ちながら、それぞれの現場で今も可能性を模索してるんだろうな、と思います。
「この日、思っていたこと」から次の自分へ
所属、働き方、住む場所、家族……。見た目に色んなことが変わっていっても、根っこの部分で変わらないものはきっとあるはずです。「あのとき、あんなことを考えていた」から、今の自分があります。
フリーで活動したり起業したりすると、不安はつきものです。
今回、贈り手として話を聞きながら、また原稿をつくりあげる側として後日言葉を紡ぎ直しながら、彼女がふと何かに迷いを感じたとき、本を通じて「自分の気持ちを語った『この日』のこと」が少しでも蘇ったらいいなと素直に感じました。